Japanese Literature: Heeey! Come on Ooout!（おーい でてこーい）

Hoshi, Shinichi

星ほし 新一しんいち

– Synopsis –

あらすじ

This is a story that happened in a village near the city.

これは、都市としの近ちかくのある村むらで起おこった話はなしです。

One day, a villager found a huge hole at the site of the small shrine in a mountain.

ある日ひ、村人むらびとが山やまの社やしろの跡地あとちに大おおきな穴あなを見みつけました。

The hole was deep and dark.

深ふかく暗くらい穴あなでした。

The villager called people together.

村人むらびとは、人々ひとびとを呼よび集あつめました。

Someone said, “It might be a fox’s hole.”

誰だれかが、「狐きつねの穴あなかな。」と言いいました。

Another person called into the hole, “Heeey! Come on Ooout!”

ある人ひとが、穴あなに向むかって「おーい、でてこーい。」と叫さけびました。

There was no response.

反応はんのうはありませんでした。

A young man threw a small stone into the hole.

ある若者わかものが穴あなの中なかへ石いしころを投なげました。

There was no echo came back as well.

やはり、反響はんきょうは返かえってきませんでした。

The hole has become famous.

その穴あなは、有名ゆうめいになりました。

Many people came over from all around to see it.

それを見みるため、沢山たくさんの人ひとが至いたるところからやってきました。

One newspaper reporter put a weight on the end of a long string and hung it in the hole.

ある新聞記者しんぶんきしゃが、長ながい紐ひもの先さきに重おもりを付つけて穴あなに垂たらしました。

The string went down until it’s length came to an end.

紐ひもは、その長ながさが尽つきるまで下さがっていきました。

In the middle of winding it up, the string ended up broken.

その紐ひもは、巻まき上あげる途中とちゅうで切きれてしまいました。

One scholar rang the loudspeaker at maximum volume into the hole.

ある学者がくしゃは、穴あなに向むかって音量おんりょうを最大さいだいにした拡声器かくせいきを鳴ならしました。

On the ground, the sound can reach tens of kilometers.

地上ちじょうなら、何十なんじっキロも遠とおくまで達たっする音おとです。

However, the hole was silent.

しかし、穴あなは静しずまり返かえっていました。

The scholar said, “Fill it.”

その学者がくしゃは、「埋うめてしまいなさい。」と言いいました。

One businessman said to the villagers, “If you give me the hole, I’ll fill it.”

ある利権屋りけんやが、 「その穴あなをくれたら、私わたしが埋うめます。」と村人むらびとに言いいました。

Then the village mayor said to the businessman, “We have to build the small shrine there again.”

すると村長そんちょうが、「私わたしたちは、元もｔどおりにそこに社やしろを建たてなければいけない。」と利権屋りけんやに言いいました。

The businessman said, “I’ll build a better one for you.”

利権屋りけんやが言いいました。「私わたしがもっと立派りっぱな社やしろをを建たてましょう。」

Neither the village mayor nor the villagers had any objections to the businessman.

村長そんちょうも、村人むらびとも、利権屋りけんやに異議いぎはありませんでした。

The businessman advertised the hole as a new dump in the city.

その利権屋りけんやは、都市としで、その穴あなを、新あたらしいごみ捨すて場ばとして宣伝せんでんしました。

And, he earned a lot of money by throwing rubbish into the hole.

利権屋りけんやは、穴あなにごみを投なげ込こみ、多おおくのお金かねを稼かせぎました。

It seemed that the hole was so deep, no matter how much rubbish was thrown away, there was no sign that it would fill up.

穴あなはよっぽど深ふかいのか、いくらごみを捨すてても、いっぱいになる気配けはいがありません。

Everyone thought only about producing, but no longer worried about rubbish.

誰だれもが生産せいさんすることだけを考かんがえて、ごみについて心配しんぱいしなくなりました。

Trucks carried nuclear waste from far away.

トラックが、遠とおくから核かく廃棄物はいきぶつを運はこんできました。

The villagers were worried about the safety of the nuclear waste, but the power company explained to the villagers that it would never harm the ground for thousands of years, and the villagers were convinced by sharing the profits with them.

村人むらびとは核かくごみの安全性あんぜんせいを心配しんぱいしましたが、電力会社でんりょくがいしゃは数千年すうせんねんは絶対ぜったいに地上ちじょうに害がいを与あたえないと村人むらびとに説明せつめいし、村人むらびとは会社かいしゃと利益りえきを配分はいぶんすることで納得なっとくしました。

The village has turned into a city.

村むらは、都会とかいに変かわりました。

People built new buildings one after another.

人々ひとびとは、次々つぎつぎと新あたらしいビルを建たてました。

One day, a construction worker taking a rest on a top of the building under construction, heard a voice over his head.

ある日ひ、建築中けんちくちゅうのビルの上うえでひと休やすみしている作業員さぎょういんの頭上ずじょうで、こんな声こえが聞きこえました。

“Heeey! Come on Ooout!”

「おーい、でてこーい。」

He looked up, but he only could see the blue sky.

彼かれは見上みあげましたが、青あおい空そらしか見みえません。

He thought it was just his imagination.

彼かれは、気きのせいだと思おもいました。

Soon after, a small stone grazed him and fell down to the ground.

すると、小ちいさな石いしころが彼かれをかすめて落おちていきました。

(Translation: Narai, Hajime)

（翻訳：楢井 肇）

“Ōi Detekōi” (1958)

『おーい でてこーい』（昭和３３年）

Author: Hoshi, Shinichi (1926-1997)

著者：星 新一（大正１５年～平成９年）

First publication: a science fiction fanzine “Uchūjin (Space Dust)” No.Aug.1958

初出：同人誌『宇宙塵』昭和３３年８月号

Sourcebook: “Ōi Detekōi short-short Masterpiece Selection”

底本：『おーい でてこーい ショートショート傑作選』

For those who live in the far future, those who are living now need to aim for a sustainable society.

遠とおい未来みらいに生いきる人ひとの為ためには、今いまを生いきている人ひとが、持続可能じぞくかのうな社会しゃかいを目指めざす必要ひつようがありますね。